予防接種

予防接種は、深刻な、時には死に至る病気から子供を守るものです。

米国小児科学会とアメリカ疾病予防管理センターは毎年更新される同じ予防接種カレンダーに沿って予防接種を行っています。フランスの予防接種カレンダーとは異なっていまて、現在の推奨事項は下記のサイトをご覧下さい。(英語)

http://www.cdc.gov/vaccines/schedules/index.html

 

日本に帰国する予定がある場合は、日本の予防接種スケジュールに基づいて予防接種を行うことも可能です。フランスでは医師がワクチンの在庫を持っていないため、自ら薬局に処方箋を持っていき、購入する必要があります。

 

2013年の4月にフランスの予防接種スケジュールが大幅に改正され、定期予防接種の減少や接種時期の変更がありしました。帰国の際に問題を生じる可能性がある場合は、ラブジョイ医師に相談してください。

 

予防接種の安全性や投与されたワクチンの数に関して心配事や疑問がある場合は、ラブジョイ医師に相談してください。また以下のサイトも参考にしてみてください。(英語)

http://www2.aap.org/immunization/

 

予防接種の種類

ロタウイルスワクチン

 

このワクチンは、ロタウイルスによって引き起こされる酷い下痢から子供を守ることを目的としています。

 

ワクチンの種類はRotateqとRotarixと二種類あります。Rotateqはアメリカでは2006年11月に米国小児科学会で認可され、今では公式に推奨されています。Rotarix(経口ワクチン)はアメリカと同じようにフランスでは2008年4月に認可されました。この2つのワクチンの安全性と効果は同等とされていて、Rotarixは2回接種、Rotateqは3回接種が必要になります。Rotarixは通常1回目の接種を2〜4ヶ月の間に、2回目の接種を8ヶ月に行います。ロタウイルスの予防接種は経済的な理由により、フランスでは定期接種ではありません。このワクチンは、潜在的にセリアック病になりやすい子供、発病するリスクを減少します。

両方のワクチンがアメリカでは安全で推奨されています。

 

はしか・おたふく風邪・風疹(MMR)新三種混合ワクチン

 

最初の接種は12〜15ヶ月で、2回目は4〜6歳に行います。この3疾患はアメリカでは今ではほとんど見られませんが、ヨーロッパではまだ存在しています。2回目の接種

を受ける前は、抗体が完全ではないため、病気にかかることもあります。フランスの予防接種スケジュールではアメリカよりもっと早い時期、18〜24ヶ月の間に2回目の接種を必要としています。フランスでは2007〜2011年に、予防接種を受けているにもかかわらず、はしかが流行しました。フランス当局は、24ヶ月の時点での2回目の接種をすることを重視していますが、アメリカや他の国々は、子供が幼稚園に入った4〜5歳のタイミングですることを重視しています。

インターネット上で、MMRワクチンと自閉症の関係性が指摘されましたが、過去10年間に行われた主な4つの研究によれば、将来の発達の問題と予防接種の間には、科学的な関連性が認められていません。それに加え、フランスで2010年6月、Lancet(医学雑誌)は自閉症とMMRの関連性を指摘した科学論文を撤回しました。著者であるアンドリューブレークフィールド医師がデータを改ざんしたことが分かったからです。また彼は経済的利益のために論文を利用して、1回接種で免疫をつけることの出来る、はしかのワクチンの特許を申請していました。2011年1月12日付けのインターナショナル・ヘラルド・トリビューン(現インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ、パリに本部を置き世界各地で発行される英字新聞)には、”自閉症詐欺”と名付けられた記事が載っています。

 

ジフテリア・破傷風・百日咳(DTaP)ワクチン

 

百日咳は幼児にとって危険な病気です。数年前には、予防接種による副作用、特に痙攣が問題視されました。新しい無細胞性ワクチンになって、今ではリスクは非常に少なくなっていますが、 発作性疾患の既往歴、家族歴があれば、医師に相談してください。

ワクチンによる副作用よりも、百日咳にかかり、死に至る可能性がはるかに高いです。百日咳のワクチンを受けていない場合、3000分の1の確率でかかりますが、それに対し、予防接種により、神経学的障害を引き起こす可能性は100万〜200万分の1です。抗体を持っている子供が少なければ、百日咳にかかる可能性が増えます。米国小児科学会は抗体を強めるために、11〜12歳時の追加接種を推奨しています。このワクチンはフランスの現地校に入学、入園する際には必須となっています。

 

フランスではアメリカのように百日咳の4〜6歳の接種は必要ありませんが、ほとんどの場合、DTPワクチンで、必要な量を接種しています。フランスの予防接種スケジュールでは、百日咳の追加接種を11歳、26〜28歳と2回推奨していて、2回目は親から子供への感染を減少させるためですが、アメリカでは今のところ、推奨されていません。

 

2013年には、アメリカとフランスのHAS(健康のためのフランスの国立庁)が、全ての女性に妊娠毎の百日咳の追加接種を推奨しています。

 

Hib(真正細菌であるインフルエンザ菌)ワクチン

 

インフルエンザ菌は、髄膜炎や喉頭蓋炎、肺炎など、幼児の生命を脅かす原因となる細菌の一種です。アメリカでは、ワクチンが出来るまで、毎年1万人以上の子供が細菌性髄膜

炎にかかっていました。その中で500人くらいが死亡し、3800人くらいに知能障害や視覚障害、聴覚障害、脳性まひの後遺症が残っていました。ワクチンが出来たおかげで、真正細菌であるインフルエンザ菌はもうアメリカではあまり見られません。Hibワクチンはインフルエンザウイルスから引き起こされるインフルエンザ(流行性感冒)や髄膜炎には効果がありません。

 

ポリオワクチン

 

ポリオワクチンは今ではまれですが、弛緩性の麻痺を起こす、特異的な治療法のない病気から子供を守ります。2000年発行された予防接種スケジュールでは、ポリオに対して、不活化ポリオワクチン接種を推奨しています。フランスでは16〜18歳まで5年毎に、それからは10年毎とアメリカより多くのワクチンを接種する必要があります。今ではシリアやイスラエルでポリオの再発が見られます。

 

肺炎球菌ワクチン

 

肺炎球菌とはヘモフィルス・インフルエンザ菌b型(Hib:ヒブ)のように、 深刻な血液感染をして、菌血症や髄膜炎、骨感染や関節感染だけでなく、耳の感染症を引き起こす可能性のある細菌です。アメリカでは2000年より、乳児のワクチンが入手できるようになりました。アメリカでは15ヶ月までに定期予防接種と同時に4回接種が行われますが、フランスでは3回行われます。

 

B型肝炎ワクチン

 

3回の接種をすることで抗体ができます。B型肝炎ワクチンを接種することで、B型肝炎と、一次感染から20〜30年後に起こりうる深刻な肝臓障害が予防できます。アメリカでは毎年5000人の大人がB型肝炎に関連する肝臓ガンや肝硬変で死亡しています。感染するのが若ければ若い程、深刻な症状が起きるリスクが高まります。

 

まだB型肝炎ワクチンの接種をしていない子供がいる場合は、接種をするべきかかかりつけ医に相談してください。

 

ここ数年、フランスではB型肝炎ワクチンの副作用として、多発性硬化症の関連性の疑いが問題視されましたが、フランスの研究では子供との関連性を示した科学的な根拠はなく、毎年2500人以上の人がB型肝炎で死亡していることを考慮して、厚生省はワクチンは接種するべきであるとの見解を示しています。

 

水痘(水疱瘡)ワクチン

 

水痘ワクチンは一般的に12〜18ヶ月の間に接種しますが、水疱瘡になったことがなく、予防接種も受けていない場合は、それ以上の年齢でも接種可能です。13歳以上の場合は4週間の間をあけて2回の接種が必要となります。2007年からは抗体を高めるために4〜6歳での追加接種をしています。1回の接種で水疱瘡を70〜90%予防することができます。感染しても、接種しないで自然感染するよりも軽くすみ、水疱のあとも残りにくくなります。予防接種を受けると、欠席や欠勤をしなくてすみ、皮膚感染症や将来帯状疱疹にかかる可能性を減らし、医療費を削減することが出来ます。

予防接種をしないと決めた場合は、思春期や大人になって水疱瘡にかかった場合に、もっと深刻な病状となり、水疱の痕が残るかも知れないので注意してください。フランスではワクチンは推奨されていませんが、思春期になって、まだ水疱瘡になったことがない場合には、積極的に接種を推奨しています。

 

A型肝炎ワクチン

 

2007年からアメリカで全般的に接種を推奨しています。フランスでは発展途上国への旅行者も含め、リスクの高い患者に接種を推奨しています。A型肝炎は汚染された水や食べ物からうつる病気で、発展途上国でよく見られます。予防接種は少なくとも6ヶ月間あけて、2回接種が必要です。12ヶ月以上から接種することができますが、1回の検診での予防接種の数を最小限にするために、ラブジョイ医師は通常、18ヶ月と24ヶ月に予防接種をしています。B型肝炎と組み合わせることも可能です。

 

髄膜炎菌ワクチン

 

フランスには、髄膜炎を生じる細菌の一つである複数の髄膜炎菌ワクチンがあります。アメリカでは、A,C,Y,W135を組み合わせたワクチンを11〜12歳、もしくは高校入学の際に、予防接種を受けていなければ大学入学の際に、受けることを推奨しています。このワクチンはMenveoと言う名前で2010年4月から、フランスで生産、販売されるようになりました。2011年には、アメリカの予防接種カレンダーに追加接種が加わりました。追加接種を受けたあとは抗体が生涯にわたると考えられています。

 

C郡のみの髄膜菌炎ワクチンは、フランスでは2010年6月から12〜24ヶ月の幼児への、接種が全般的に推奨されています。抗体は3年間のみ持続します。

 

また、A郡とC郡を組み合わせた髄膜菌炎ワクチンもあり、 抗体は3年間のみ持続します。残念ながら、髄膜菌炎によってひきこされる乳幼児の髄膜炎は、かなりの割合でB郡によるもので、ワクチンは存在しません。

 

ヒトパピローマウイルスワクチン

 

ガーダシル(Gardasil)と呼ばれるこのワクチンは、子宮頸癌の主な原因となるヒトパピローマウイルスの感染を予防します。史上初めての癌ワクチンで、11〜12歳の初交前に接種を推奨しています。この年齢層で投与することが10代後半に接種するより、効果的です。多くの性交渉を持った後には効果がありません。6ヶ月かけて3回の接種を受けます。フランスでは2006年11月23日に承認されました。現在では高価なワクチンですが、フランスの健康保険に入っている場合、65%が払い戻しされます。2008年の春からは2種類目のワクチンが登場しましたが、Gardasilよりも払い戻し率が低いので、Gardasilを選ぶのが賢明かと思います。

 

アメリカのACIP(予防接種に関する諮問委員会)が2011年の11月上旬、11歳以上の男児への予防接種を推奨範囲を広げたことにより、2012年3月から、米国小児科学会は公式にアメリカの予防接種カレンダーへ追加しました。予防するためでなく、無症候性キャリアの女性パートナーへの伝染を防ぐためです。(男性も女性もヒトパピローマウイルスに感染してもしばしば無症候性(病原体による感染が起こっていながら、明瞭な症状が顕れないまま感染症を伝染させること)です。)

 

アメリカで既に56万回投与されているこのワクチンの安全性に関して、メディアに何度も問題提起されていますが、科学的に疑問視されていません。

 

インフルエンザワクチン

 

(最新の情報はインフルエンザのページをご覧下さい。)

インフルエンザは誰でもかかる可能性のある感染症です。毎年のように、冬の間、インフルエンザが蔓延します。インフルエンザは非常に伝染性が高く、咳やくしゃみによって感染し、特に保健所や学校、老人ホームなどで流行します。インフルエンザは一般的に急性で、 筋肉痛や熱、寒気や頭痛、咳、鼻水などの症状を伴います。喉頭炎を起こすこともあります。 インフルエンザの合併症として肺炎があります。心筋炎や慢性肺疾患を悪化させることもあります。

毎年流行る型が違うため、ワクチンは毎年接種することになります。8歳未満の場合、最初の年は予防接種を2回受ける必要があります。3歳未満の場合、毎回接種量は半分になります。フランスでは通常10月中旬頃から、処方箋なしに入手することができます。 継続的な流行がない限り、通常1月の終わりで接種を停止しますが、4月まで受けることが可能です。卵アレルギーがある場合、一般的にこの予防接種を受けるべきではありません。米国小児科委員会は2008年の8月から推奨接種対象を6ヶ月〜18歳まで広げました。フランスではぜんそくや喘鳴といった肺障害の前歴がある場合、心臓病の場合をのぞき、財政的な制約から全般的に接種を推奨していませんでしたが、2008年11月から、6ヶ月以下の乳児と生活を共にしている家族にも接種を推奨しています。米国小児科学会は5歳以下の子供や、リスクの高い子供がいる場合、家族全員に接種を推奨しています。ぜんそくや細気管支炎の疾患がある場合、年齢に関係なく、家族も含め毎年予防接種をすることを積極的に推奨しています。

 

BCG

アメリカでこのワクチンを今まで推奨したことはありません。結核を防ぐことは出来ませんが、子供の深刻な結核の予防には非常に効果的であるとされています。2007年7月からはフランスでBCGが必須ではなくなりましたが、それでもリスクのある子供には接種を推奨しています。ラブジョイ医師とBCGの長所や短所について相談してください。

 

予防接種ができない理由

以下の条件のいずれかに当てはまる場合は、予防接種を受ける前に医師と相談してください。

1)予防接種でアレルギー反応を起こしたことがある。

2)痙攣や神経疾患がある。

百日咳の予防接種(DTaP)は痙攣や神経疾患がある場合は受けないでください。破傷風とジフテリアの二種混合(Td)の、百日咳が入っていない予防接種は受けることができます。

3)免疫不全である。

免疫の弱い子供には、水疱瘡やMMR、ロタウイルスなどの生ワクチンの予防接種を受けさせないでください。 不活化ポリオワクチン(IPV) を4回接種してください。経口生ワクチンは免疫不全の子供や、エイズなどの後天性免疫不全症候群最近にかかった大人と生活を共にする子供が、ポリオに感染する小さなリスクを伴います。

4)卵アレルギーがある。

2013年には、フランスの推奨が修正され、卵アレルギーがある場合でも、アレルギー専門医の監督下で、インフルエンザや黄熱病の予防接種を受けることが出来るようになりました。卵アレルギーの場合も、その他の定期予防接種は受けられます。麻疹とおたふく風邪のワクチンは、にわとりの胚細胞で増殖されますが、卵のタンパク質は除去されているため、卵アレルギーの皮膚テストをすることなく、受けることが可能です。

 

予防接種をしない不当な理由

多くの子供が推奨されている全ての予防接種を受けていません。 親の不必要な予防措置で定期接種を延期したり、キャンセルしています。1989年4月にはアメリカの公衆衛生局は、延期したりキャンセルする必要性のない場合のリストを発表しました。以下の条件のいずれかに該当した場合でも、予防接種ができるということです。

以前DTaPの予防接種の後、注射部位が赤くなったり、腫れや痛みを伴った場合

以前DTaPの予防接種の後、40.5℃未満の発熱があった場合

発熱を伴わない下痢や、咳、風邪など軽い風邪を引いている場合

発熱を伴わない下痢や、咳、風邪など軽い風邪から快方に向かっている場合

最近伝染病にさらされた可能性がある場合

抗生物質を飲んでいる場合

未熟児だった場合

母親が妊娠している場合

母乳で育てられている場合

卵アレルギー以外のアレルギーがある場合

乳幼児突然死症候群や痙攣の家族歴がある場合

 

ワクチンの安全性について懸念がある場合

ラブジョイ医師に様々なインターネットサイトのリンクを紹介してもらうか、Martin Meyers氏とDiego Pineda氏の共著のワクチンの安全性の懸念を評価したガイドの”Do Vaccines Cause That” を購入してみてください。(英語版)